コミュニティ通訳養成講座
2007年度、OFIX(大阪府国際交流財団)のNPO活動支援助成事業を受け、10月7日から、コミュニティ通訳養成講座を開催しました。
八尾市にはベトナム籍市民が約850人(八尾市外国籍市民の10%を占める)暮らしています。そのような状況をふまえて、八尾市でも2006年から1週 間に3回、市役所で通訳を配置したり、多言語で情報を出すなどしています。しかし暮らしのこと、病院や保健センターなど日々の生活に伴って発生する問題に は、八尾市だけの通訳では対応することができず、トッカビへの相談も毎月約40件寄せられています。
私たちが関わった経験から、ベトナム籍市民の中でも、30~40代のお父さん、お母さん、日本で生まれた2世の子どもたち、渡日して来た10代の青年た ちなど、コミュニティの中には多くの人材がいます。しかし日本で生まれた、あるいは幼少時に日本に来日したベトナム人の青年たちは、両言語を話す能力は 持っているものの、通訳をする経験が少ないため、生活に適した通訳言語に置き換えることが難しくなっています。また彼/彼女らにとっては、両言語を話す能 力が将来的に生活をしていく上で(金銭的に、社会的に)メリットとなる認識が見えにくいため興味を持っていても実際の活動にまでいたらないことが多くあり ます。
また定住歴が長いベトナム籍市民が日本語を話す場合、日常会話などには支障がなくとも、日本の制度や行政用語がよくわからないために適切な日本語やベト ナム語に通訳できないことがあります。反対に日本人がベトナム語を話す場合、ネィティブ・スピーカーではないために日本の制度や状況がわかってもそれを適 切なベトナム語に通訳できない、当事者が話すベトナム語を的確に日本語の専門用語に通訳できない場合があります。
上記のような問題をふまえて、本講座は、保険制度や在留資格、教育の問題など、日本で暮らして行くには欠かせない10のテーマを取り上げ、参加者がとも に学びあう機会を創り能力向上を図ることを目的としています。講師には様々な場面で活躍されているベトナムの方にお願いしています。講座もベトナム語で進 めました。
1日目は「通訳の心得」「社会保険制度」を勉強しました。参加者はベトナム人が7名、日本人が5名で和気あいあいと行われました。ロールプレイでは少し 気恥ずかしさもありましたが、積極的に参加してくれました。この講座を通じて、次世代の人材育成、コミュニティの活性化・人材のエンパワーメントにつな がっていけばと期待しています。
12月8日に全10回を終了した講座には、延べ104人、毎回平均すると10人が参加したことになります。
今回のようなベトナム語と日本語に特化した通訳養成講座の試みは初めてだったので、参加人数があつまるのか、ロールプレイはうまくいくだろうか、と不安 だらけでした。しかしそんな事務局の不安に反して、毎回参加者は熱心に講義をうけ、積極的に他の参加者と意見交換していました。参加者はベトナム語と日本 語双方の母語話者が集まったので、ふだんの通訳の場面で「どのような言葉を使ったらいいのか」、「専門的な言葉をどう簡単に言い換えるのか」など疑問に感 じていることを、ロールプレイの場を借りて実践しながら確認するよい機会になりました。また今回は2世や中学・高校で渡日してきた青年たちも参加してくれ たので、世代間を通じて、文化背景をも考慮して通訳をしていく大切さも共有できました。
事件や在留資格など難しいテーマも取り扱ったので専門用語を理解するのは大変だったと思いますが、経験豊かな講師陣のおかげで、参加者から笑い声もでる講義になりました。
ロールプレイでは、初回の気恥かしさも回を重ねるごとにリラックスして、一方的に聞くだけの「講義」ではなく、自らも参加し学べる実践の場として、その役割はとても大きかったと思います。
最終回に行った「振り返り」の中で、「ベトナムにルーツを持つ私がコミュニティの中で通訳を行うことによってコミュニティがさらに強くなる」という意見 がありました。これはこの事業の目的に書いたものとほぼ同じです。これを機に積極的にコミュニティにかかわっていってほしいと思います。
講座事業の報告書を作成しました。ご興味・ご関心のある方は事務局までご連絡下さい